踏切のある新幹線?~山形

高い山が迫る山形市内
2012年7月24・25日、山形。
福岡から山形へはJALで羽田まで飛び、乗り換えて山形空港まで行くのが早い。今回は東京駅から東北新幹線「つばさ」で行くことにした。福岡を10時に発ち、着いたのは16時。やっぱり遠い。でも、気温は福岡ほど高くないのはほっとする。これまで3か所あった未踏の県庁所在地の一つが山形だったので、これで残すところは徳島と福井の2県となった。

山形へは東北本線の福島駅が分岐駅となる。ここで連結していた青森行の「やまびこ」と切り離し、山形新幹線「つばさ」単独で西へ進路をあらためる。

ここから、ちょっと異様な感じを覚えるのである。まず、新幹線なのにノロノロ運転が続く。そして新幹線から見る車窓の景色が妙にリアルなのだ。例えば、線路の草木が車体に触れそうなところまでもたれかかっていて、まるで在来線の車窓のようなのだ。この時点では、「変な新幹線だなぁ」・・・である。

前後左右とも緑一色の山あいを抜け、民家の連なる小さな町に出た瞬間、またまた目を疑った。なんと新幹線が民家の庭先を走っているではないか。その先には「カン、カン、カン・・・」と踏切まで・・・。

知らなかったとはいえ、これは驚きだ。以前、新幹線の踏切事故というのをニュースでみたが、つまりこういう状況だったからなのだと腑に落ちる。実は山形新幹線は「ミニ新幹線方式」とかで、東海道新幹線などとは法的にも“別物”らしい。どちらかといえば在来線の特急に近い。東京から山形まで約3時間かかった理由も頷ける。


復元が進む山形城跡
 山形市は東西南北を山に囲まれた盆地に開けた都市だ。郊外には松尾芭蕉ゆかりの山寺がある。駅に隣接するビルの地上24階の展望所から西を望むと、遠くになだらかな山容の月山をみることができた。

『・・・彼方に白く輝くまどかな山があり、この世ならぬ月の出を目のあたりにしたようで・・・』と、森敦の小説『月山』の一節が表すその山だ。小説のような神秘的な存在感を一度、この目で見てみたいと思っていた。月山は古来、死者の行くあの世の山とも言われているそうだが、じつに“まどか”で、やさしげな山容をしていた。願いはかなったが、日が暮れて写真が撮れず、残念。

絶品、焼き味噌。少し甘く香ばしい


毎度のことながら観光に来ているわけではないので、山形らしさを実感するには例によってご当地の美味い物を漁るのが手っ取り早い。狙いをつけた入ったお店に「あれっ?確か以前にも同じような店に来たことがある」と直感したとおり、店の造りはほとんど同じだが、そのご当地の料理を提供するというコンセプトのチェーン店で、長野で感激した店とも同じ系列だったので、ここならハズレはないと確信する。
鯉のエサのような「麩」のピザ


彼の地を知るにはまず地酒を知るべし・・・と崇高なるポリシーのもと、さっそく乾杯。メニューには80近くの銘柄が紙面をきれいに縦横に分割して構成されているので、イロハのイから片っ端に注文する。できるだけたくさんの銘柄を楽しみたいので3人で1合ずつ味わっていく。甘口、辛口とどれも淡麗で微妙に違う味のニュアンスを三人それぞれが女性に例えて評していく。ただ、どれも味わいすっきり、緑の黒髪の生粋の日本美人だから味に気品が漂う。上質の酔い心地とはこのことか。

 これに少し甘みのある地元の焼き味噌をちびちびと口に絡め、酒と馴染ませて味わっていく。ああ絶妙也。ほかに「麩のピザ」が当たり! 締めは「米沢ラーメン」を選ぶ。薄口で少し甘みのある醤油味に山形独特の縮れ麺。もちもち感があって歯応えもよい。腹に重くなく、飲んだ後は博多トンコツラーメンよりこっちがいいかも。

薄口醤油味と縮れ麺の米沢ラーメン

閑話休題、昔、“やまがたすみこ”というかわいいフォークシンガーがいたのを思い出した。山形県出身かと思っていたら東京都出身だった。井上鑑と結婚したとは知らなかったなぁ。

『山形や 芭蕉も一服 月の山』~良

(http:tn-p.jp)