綾町の世界的規模を誇る大吊り橋から望む新緑の照葉樹林 |
福岡市から九州自動車道~宮崎自動車道高原ICを経て約3時間半、
決して交通の便がいいとは言い難い宮崎県綾町へ。
交通の便が・・・と敢ていうのは、それでも多くの観光客が訪れる
魅力ある町だからである。
町の奥座敷に、とても高い吊り橋がある。なんでも規模は世界一?
森と清流を眼下にいっとき空中散歩が楽しめる・・・という
余裕のある人もいれば、足元が透けているために見るとはなしに
谷底に視線を落としてしまって固まる人もいる。
おまけに風が吹いたり、人が歩くその反動でゆらゆらと橋が揺れ
足元を踏み外さないかと悲鳴をあげる人もいる。
いずれにしても見る景色は同じだ。
この季節は新緑が背伸びをしてモコモコと森を持ち上げているかのような、
山そのものが生き物のように見えてくる。
この森は手つかずの自然がそのまま残った照葉樹林と呼ばれ、
とても原生的な森の姿といえるものらしく森全体が貴重な宝物なのだ。
2003年10月、私はここで急斜面をジグザグと駆け上るニホンカモシカを見た。
綾町がニホンカモシカ生息の南限地域とされ、それまで幻と
いわれたその姿は野生の動物のたくましさをにじませていた。
同行のカメラマンがたまたま持参していた望遠レンズでそれを写真に収め
宮崎日日新聞に持ち込み、後日、新聞掲載されたことがある。
ちょうど電力会社の鉄塔設置が、綾の宝を奪ってしまうのではないかという声を
企業と経済と政治の力が押し潰そうとしていたときだった。
新聞の政治欄には鉄塔を推し進めようとする電力会社や政治の声が
事件のページには「綾の森に幻のニホンカモシカが生息」の記事が載り
新聞社の計らいで、偶然撮った一枚が一石を投じることになった。
この森のなかには間違いなくニホンカモシカが棲んでいる。
そして私たちの未来を木々の隙間からじっと見ているに違いない。
※ニホンカモシカの画像は、2009年5月22日のブログにあります