徳島県三好郡東みよし町 |
梅雨真っ只中。四国地方は夕方から明朝にかけ、豪雨の予報。
取材一行は、東みよし町のドクダミの栽培農家を訪ねる。
徳島には、かずら橋などで知られる「祖谷渓」という秘境があるが
我々がたどり着いた畑は、地図で見ると、そこから西に数キロの地点だ。
いくつカーブを曲がったかわからない。標高はどんどん上がり
案内した方に聞くと400~500メートル、向こうの山の雲の高さと変わらない。
きつい山の傾斜にへばりつくように、点々と家が建つ。
家と家の距離は、数百メートル。ちょっと隣まで行くのに、急な斜面を行き来
しなくてはいけない。隣家とはいえ、大雨や大雪でも降ろうものなら
それぞれは孤立すると言っても過言ではないだろう。
山間地ならではの特異な風景であるが、正直、心静かに眺めることはできない。
不自由はないだろうか、寂しくはないだろうか、退屈はしないのだろうか・・・、
田舎で生まれた私も、これほどの山間地を知らないから想像がつかない。
生活インフラに心配はなく、スマホも使えるからと思えば、時代に取り残される
ことはあるまい。ただ、蒸し暑いこの時期、この畑で今、マムシに噛まれたら、
果たして救急車が来るまで持ちこたえられるだろうか・・・などと考えていることを
悟られないように、藪となった畑のドクダミに恐る恐る手を伸ばした。
この徳島訪問で、日本の47都道府県すべて取材に出かけたことになる。
その最後に、日本の原風景に触れたような気がする。